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高田屋のなんでも発信箱


今日はトンカツトンカツ…KYK
こんにちは、高田屋の森田です。梅田の映画館に行けば、CMで必ず流される…そう…若い女性がそれぞれアルファベット一文字をセクシーに発言するとんかつ屋のCM.『トンカツトンカツKYK』。

この文字を見て…思いつきました。『キングセイコー』の『KSK』(笑)←ふつーに紹介できなんかい!って突っ込まれそうですね。ゴメンナサイ。私の性分なのですワラ。ユルヒテ。
実は、6月分のコラムは、セイコーのキングセイコーではないブランドの時計をカキカキ…執筆していたのですが、しっくりこない文章をダラダラ書いていました。そこへ大丸百貨店のチラシが目に入りシゲシゲ見ていましたら、(集中力が無いのがバレバレ)『世界の高級時計フェア2023』と書いてあるじゃないですか!こんなところに情報見つけた!と思い、どんなラインナップなのか拝見しました。『ヴァシュロンコンスタンタン』『ブレゲ』と名だたるブランドの新作が掲載してありました。なんとその中に…『キングセイコー』…。ん?セイコーのブランドと言えば一般の方は『グランドセイコー』『クレドール』は聞いたことがありますよね。『キングセイコー』…キングって頂点っぽくて凄そう~。ってちゃう!実は、『キングセイコー』とは、ずいぶん前に生産中止となったセイコーブランドなので、なぜ???と思いました。
商品の説明書きが小さな文字で(老眼入ってきて読みにくいったらありゃしない)以下のように記載
→60年余りの時を経て2022年に蘇ったキングセイコーの新作。…なんちゃらかんちゃら。
…えー去年復活してたのぉー!知りませんでした(しれっと)
ステンレス製、3日間のロングパワーリザーブ性能付き自動巻、ついでにカレンダーも付いてるお時計が文字盤紺色と緑色の2本掲載されています。ちなみに代金は税込231,000円。
あら?リーズナブルな価格。(高いですけどもロレックスやオメガと比べたら、ずっとお安い)

掲載されていたのは写真上2本でした。ほかにシルバー文字盤(写真左下)もあるようですね。余談ですがシルバーの文字盤は、よくみると…筋状のラインが見えますし、シルバーというよりもオフホワイトっぽいですね。なんとなくスッキリしないような古っぽい。なぜ古っぽいと感じたのかと申しますと、アンティークのキングセイコーの文字盤でこの筋状の文字盤をよく見かけた記憶があるからです。ちょっと調べてみました。なんでも調べると何かを発見できますね。(ネットサイコー)そのシルバーの文字盤は『ホーンホワイト』と呼ばれていて鹿の角の白さを表現したカラーだそうです。…だから何だって?(シランガナ…)他よりも何かの付加価値があるわけではなさそうです。価格は同じです。豆知識程度に思っていてください。
さてさて、ようやく『キングセイコー』のお話です。当然ずいぶん前に生産中止になったので、そもそもの存在を知らない人も多いかと思います。
『キングセイコー』は、グランドセイコーが発売された翌年の1961年に誕生しました。1971年に最後の商品が発売され、1975年には生産終了しました。が、2000年には2000本限定で復刻版を出したりしました。2022年に復活し、徐々にブランドの活動が始まりました。
…とても簡単にご説明出来ました。パチパチパチ…って怒られるわ!
たった15年程度で消えてしまったモデル。なぜ消えてしまったのかとどのようなモデルだったのかをお話しますね。ちなみにグランドセイコーをGSと略し、キングセイコーはKSと略します。…あれ?『KYK』じゃないのって?いやもとい!『KSK』じゃないのって?この略称はキングセイコー2代目(エグザイルか!)から使われています。初代はセイコー社の『クロノス』で使用されていた54A という薄型手巻機械の改良型が搭載されていました。

2代目は、まず機械がキャリバー44系となり、秒針規制機能が可能となりました。『秒針規制』とはナンじゃ???ですね。それでは、ご自身のお時計の時間合わせをしてみてください。リューズを引っ張りだして、時間合わせの際、秒針はどうなっていますか?動き続けていますか?止まっていますか?後者であれば、『秒針規制』(=『ハック機能』)が備わっています。時間をより正確に合わせたいという要望から搭載されるようになりました。
秒針きせいの規制…KISEI。キングセイコー+きせい(頭文字)= KSK…なんとまあ嘘でしょって略称。秒針のBじゃなくて、まさかの規制のKだそうです。ワラワラ…((´∀`))
脱線しましたが、KSKのことをお話しするにはGS…グランドセイコーの存在が切っても切れません。
まず、1年先輩のグランドセイコーとキングセイコーの違いは何でしょうか?…👂正解は………
ほぼ…ありません。どーーーーいうことですか?
1961年にデビューするキングセイコーですが、同じような高級時計がグランドセイコーの1年後に発表するのはなぜなのでしょうか?実は、セイコー社には諏訪精公舎(長野県)と第二精公舎(東京・亀戸)という2つの生産拠点が存在しました。同じ精工舎の兄弟企業ながらもそれぞれに独立しており、共同…というよりも…バッチバチのライバル関係にありました。長野県の諏訪精工舎は、社内の花形で、いち早くスイス製高級時計を意識したグランドセイコーを開発しました。それに対抗するかのように東京亀戸が拠点の第二精工舎ではキングセイコーを開発します。諏訪が巨人みたいなものですね…(例えがプロ野球w)すべてにおいて最高峰を追求探求するのが諏訪のグランドセイコーで、価格も2万5000円でした。やっす!って思ったそこのあなた!2万5000円は、当時の大卒の初任給の約2倍です。
それに比べてキングセイコーは1万2000円~1万5000円でした。社会人らしくそれなりの格好をしたい新社会人にとっては、ちょっと頑張れば購入出来たので、販売数は圧倒的にキングセイコーに軍配でした。しかし、お安いからと言って廉価商品ではありません!
グランドセイコーは『世界に適用する高級時計』目指していたので、クロノメーターが認定したムーブメントを搭載している時計には『歩度証明書』が付いていました。40年代~50年代には販売時の付属品でした。(当時のロレックスにも付いていましたが、70年代には保証書という形になり、請求しないともらえなくなりました。)グランドセイコーは発売当初から秒針規制はありました。2代目からキングセイコーも秒針規制は付きますね。規制のK…ワラワラワラ
脱線しかけた…もちろん見た目のデザインはそれぞれの独自性あるでしょうけれど、…ムーブメントはおなじなのです。ただ…出荷する前の精度調整がグランドセイコーの方が念入りに行っているという違いなのです。
キングセイコーが精度調整を簡略化したとはいえそもそもの機械が優秀であり、セイコーブランドとしての精巧な作りには違いがありません。
切磋琢磨にそれぞれの精工舎でモデルを発表しますが、キングセイコーだけご紹介しますね。
1968年に『45KS』。これはハイビートキャリバーの手巻搭載のモデルを発表しました。ハイビートな為ゼンマイが切れやすかったそうです。負担がかかるんでしょうね。

ハイビートとは?ハイビートとは秒針が1秒間に10回以上動くことです。10回動くことを『10振動』と言います。現在の時計の主流は『8振動』です。クロノグラフのような計測するような目的がその時計にあるならば『10振動』である価値はあるでしょうが…上記のような時計であればハイビートである意味が…少々わからない…と思うのは私だけでしょうか?変なこだわりがあったんでしょうね。
1968年にはもう一つ、『56KS』というモデルが発表されますが、これは、ハイビートであり、自動巻機械です。
はじめは2つの精工舎がキングセイコー、グランドセイコーと分かれていましたが、56KSの機械が出来たことですみ分けやライバル的な生産をしなくなり、一緒に生産することになります。というのも56KSはグランドセイコーにも搭載されていたからです。

グランド&キングセイコーは、共に成長と認知も広がって、1971年には『52KS』=スペシャルクロノメーターが登場します。しかし、自動巻、ハイビート、クロノメーターの『52KS』を搭載した時計は…なんと最後のモデルであり75年には生産終了となってしまいます。

文字盤に『スペシャル』って書いちゃうくらいなのに…なぜ?
要因は…クォーツ時計の登場です。セイコー社が1969年に世界で初めて腕時計化に成功したためにより高精度度で手軽なクォーツ時計が世界中の時計業界を席巻。今までにも何度も使った言葉ですが『クォーツショック』
により、多くの機械式時計の暗黒時代を迎えます。皮肉と言いますか…同社の製品発表によって『キングセイコー』はセイコーのカタログからその名を消してしまいます。同社のせいで、たった10年余りの銘柄となってしまいました。社内でいろんな情報共有やらないのかしら?仲が悪いのかと思ってしまいますね。
さて、現在また復活したと言えども、まだまだ知名度も低い為、『キング』の名に恥じない風格の製品に期待したいですね‼

6月…とか関係なしで引き続きストーンカメオ~
こんにちは、高田屋の森田です。今月は、先月の続きの『ストーンカメオ』のお話をします。お忘れの方もいらっしゃると思いますが、続きからお話しますね。←ヒドイ(笑)
ストーンカメオの材料である『メノウ』を掘る作業についてお話しが途中だったので、改めて製品になるまでのお話をしますね。
彫り方は大きく2種類の①手彫り②機械彫り(③手彫り工程も多く組み入れた機械彫り=ハンドフィニッシュ)があります。
まず、①手彫りをご説明しますね。もちろん、字のごとく、工具使って手作業で彫るのですよ。だけどね、もうちょっとだけお話聞いてほしいわけよワラ。
先月にご説明しましたが、ストーンカメオは、『ドイツ』のイーダーオーバシュタイン近郊で世界シェア90%近く製作されています。彫刻家は20名ほどいますが、すばらしいカメオ製作の技術をもつ彫刻家はたった10名ほどです。少な!『すばらしい』の基準は分からず、また残りの人の評価は如何ほどなのか気になりますね。そして、余りに彫刻家が少ないことに驚きました。手彫りの彫刻技法は、おそらく皆様が想像している技法とは違うのですが、(おそらくですよ!)およそ2000年以上前から引き継がれている技法だそうです。気になりますよね~技法は変わっておらず、動力が川の力から電気に変わりましたが。
技法の前に、前回のおさらいですが、材料である『メノウ』についてです。ストーンカメオの彫る土台のメノウですが、とてもとても硬いのです。硬さを表記するモード硬度(10段階)なら硬度7です。上から4番目です。ちなみにダイヤモンドが最高硬度の硬度10、コランダムのルビーやサファイヤは硬度9です。
なんと、この硬さは、金物工具を使ったとて、手の力だけでは、彫ることが出来ません。電気のない時代は硬度9のサファイヤの細粒を埋め込んだ砥石(といし)を使って川の水車の回転力を使って彫っていました。
もうちょっと硬度の低い石はなかったのかと考えてしまいますよねw。
さて、皆さんは彫る方法のイメージをどのように想像されているのでしょうか?一般的には歯医者さんで使用するような先端が回転するペン型で彫っていくイメージを浮かべていませんか?…(ΦωΦ)フフフ…。違います!『案ずるより生むが易し』ではないですが、まず写真見てもらいましょう。実は、固定された回転工具の先っぽにメノウを押し付けて彫っていきます。


もっとわかりやすい画像はないものかと探しましたが上記2枚しか見つかりませんでした。ごめんなさいね。で、このような方法で彫っていきます。よくもまあこの技法で繊細な作品が出来上がるものですね。ビックリです。
手彫りなので板状だけにこだわらずどんなものでも彫刻が出来るという利点はありますね。

小さなカメオの場合は、松脂(マツヤニ)でワインのコルクに止めて彫刻します。ワインのコルクってところが、いかにもヨーロッパっぽいですね。(上記写真)
次に②機械彫りをご説明しますね。機械彫りと言えど全自動でカメオが量産されるわけではありません。調べてみると…作業工程が多くてまあまあ…めんどくさそうです。
1⃣まずマスターカメオを作る必要があります。それを手彫りで製作します。手彫りするんかいw。
2⃣マスターカメオを元に金属製の原版を作ります。ここがしっかりしないと繊細な製作が出来なくなるので慎重に行うそうです。(写真下)

これでようやくスタートに立ったようですよね。
3⃣原型を使用して銅板を作られ、細長い工具に1枚ずつ手作業で取り付けます。
何度も繰り返しになりますが、メノウはなんたって硬いw。硬いがために銅板がダメになります。wwwビックリ。1枚のカメオを製作するために何枚使うのでしょうか?…3~4枚?いえいえ7~8枚ですって。コストがかかるかかる。
4⃣これで準備万端。彫るぞー。
どのように?銅板にメノウ素材をセットし超音彫刻機で研磨していくのですが、研磨入りの水を流しながら1枚1枚製作します。彫刻の進行を常に確認しながら銅板を差し替えていきます。勝手に彫ってくれるわけではないのですね。
彫刻が甘いとぼんやりしたカメオになったりと熟練の技術者がサポートなしでは美しいカメオは出来ないということです
…これが機械彫りです。
手彫りの生産速度はゆっくりだけど、機械彫りと言えど、なかなかの工程をかんがえたら手彫りの方が…効率がよさそうにも思えてきます。
さて、本来ここで今月終わるつもりでしたが、さわりだけでも『シェルカメオ』についてお話しますね。(このペースでカメオのお話をしていたら今年中カメオのなりそうですwww)
字のごとく、シェル=貝殻にカメオの技法を施します。ストーンカメオの主要生産地は、ドイツでしたが、シェルカメオの主要生産地はイタリア(南イタリアのナポリ近郊のトール・デル・グレコ)です。90%のシェアだそうです。逆に、残り10%はどこなのかが気になるところですが…。さて、彫る素材のシェル(貝殻)の代表的なのが『サードニクス』と『コーネリアン』です。さくっと素材説明いたします。『サードニクス』はカリブ海で採集されるミルクチョコレートのようなブラウンをベースにホワイトの層が重なった巻貝です。貝の起伏や局面をあえて生かした彫刻が出来ます。硬い貝の為、繊細な彫刻が出来ますが、やはり硬い為に作品作りに工程が増えるために高価になります。次に『コルネリアン』は東アフリカ沿岸で採集されるブラウンや赤褐色をベースにホワイトやオレンジの層が重なった貝です。この貝は柔らかいので工程数が減るためにポピュラーな素材として使われます。

『イタリア展』とか催しがあれば、みかけたことのあるかもしれませんね。これ以上のお話は…長―くなりそうなので、この辺で、次回もシェルカメオの続きをお伝えしたいと思います。お待ちあれ~。